[Volvox01110] Volvox Monthly Greeting (1 July 2017) VolvoxMLの皆様 ML管理者 西郷です。 今年も半分終わり、後半に入りました。 夏休みも近づいてきました。 夏休み中の研究会、講演会の情報、参加された方の報告があれば、 お願いします。 5月5日に孵化したカイコは、糸取り、フェロモンの実験(演示)を 終えて、産卵しました。黄繭の方が「休眠卵」だったので、 安心していたら、白繭の方は「非休眠卵」で、昨日から孵化してきました。 なんとか郵送できると思います。 欲しい方は私信 saigot@js2.so-net.ne.jp までご連絡下さい。 昨年採卵した蚕種もまだあります。 海の日に福岡で行う実験講座の準備で少々バタバタしています。 最近の話題から(URLが切れている場合つなげて下さい) 1.モロッコから30万年前のホモ・サピエンスの化石 2.琥珀の中から恐竜時代の鳥類のひな 3.ガラパゴスコバネウが飛べなくなったわけ 4.ネコは自ら家畜化した、遺伝子ほぼ不変 5.DNAのたたみ方は「いいかげん」 6.サザエの記載者 福田 宏さんの特別講演会 7.名古屋大学博物館企画展・ムシの世界 8.国立科学博物館特別展「深海2017」 9.日本生物教育会 栃木大会8/3・4(再掲) 10.ボルボックス野外で採れます 11.現在配布・貸出可能な教材 ----------------------------------------------------------- 1.モロッコから30万年前のホモ・サピエンスの化石  「Homo sapiensは20万年前の東アフリカで生じた」というのが定説で、  「生物」の教科書にも載っていて、2016年のセンター試験でも出題された。  今回、それを覆す頭蓋骨の化石がモロッコで発見された。今回の発見により、  Homo sapiensは約31万5000年前に、東アフリカだけでなくアフリカ大陸の  他の場所にも存在していた可能性が示された。 Oldest Homo sapiens fossil claim rewrites our species' history https://www.nature.com/news/oldest-homo-sapiens-fossil-claim-rewrites-our-sp ecies-history-1.22114 New fossils from Jebel Irhoud, Morocco and the pan-African origin of Homo sapiens http://www.nature.com/nature/journal/v546/n7657/full/nature22336.html 2.琥珀の中から恐竜時代の鳥類のひな  非常にきれいなものなので、是非写真を見て下さい。  授業で紹介しました。(呼吸→クエン酸回路→コハク酸→琥珀)  ミャンマー北部のフーコン渓谷で発見された9900万年前の琥珀の中から、  恐竜時代の鳥類のひなが発見された。このひなは約6500万年前の白亜紀末  に恐竜とともに絶滅した歯を持つ古代の鳥エナンティオルニス類に属する。  中国の研究チームはビルマ語で琥珀色をしたタイワンヒバリを意味する  「ベロン(Belone)」というニックネームを付けた。 「ベロン」は 7月末まで、上海自然博物館の特別展で展示されている。 A mid-Cretaceous enantiornithine (Aves) hatchling preserved in Burmese amber with unusual plumage http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1342937X17300527 http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/b/061300091/ http://jp.xinhuanet.com/2017-06/11/c_136357080_5.htm 3.ガラパゴスコバネウが飛べなくなったわけ  ガラパゴスコバネウ(Phalacrocorax harrisi)はガラパゴスに生息する  翼が小さく飛べない唯一のウ(鵜)であるが、今回、別の3種のウとともに  ゲノムが解析され、ヒトの発達異常に関連する遺伝子(多指症や合指症や  四肢骨の重複といった四肢の発達に影響を及ぼす遺伝子)が、ガラパゴス  コバネウでは見られたが、その他の種では見られなかった。こうした障害の  多くは細胞のアンテナである繊毛の異常生成に関係している。  細胞表面の繊毛の動きが体の左右非対称性をもたらすとがわかっており   (http://www.jst.go.jp/pr/announce/20100125/)、この異常が奇形など  を生み出すことがわかっている。  著者らは、ガラパゴスコバネウの短い翼は、潜水時にの浮力を減少させる  という利点があり、骨や繊毛の欠損をもたらす遺伝子が、この鳥では正に  選択されてきたのではないかと述べている。 How the clumsy Galapagos cormorant lost its flight http://www.sciencemag.org/news/2017/06/how-clumsy-galapagos-cormorant-lost-i ts-flight Loss of flight in the Galapagos cormorant http://science.sciencemag.org/content/356/6341/918.10 Decoding the evolution of species Science? 02 Jun 2017 Vol. 356, Issue 6341, pp. 904-905 DOI: 10.1126/science.aan5199 4.ネコは自ら家畜化した、遺伝子ほぼ不変  ベルギーとフランスの共同研究チームは、約9000年前から現代までのネコの  ミイラや化石など300点以上のサンプルを集め、そのうち約200のサンプルの  ミトコンドリアDNAの解析に成功した。現代のイエネコにつながる系統は、  主にふたつ存在するという。  現代のイエネコのルーツはアフリカ北部やアジア南西部に生息するリビア  ヤマネコ(Felis silvestris lybica)とすでに判明している。より古い方の  系統は、紀元前4400年頃に西南アジアからヨーロッパへと拡散した。  ネコは紀元前8000年頃からティグリス川とユーフラテス川が流れる中東の  「肥沃な三日月地帯」の農村周辺をうろつくようになり、そこでネズミを  退治したい人間たちと、互いに利益のある共生関係を築いていった。  もう一つの系統は、エジプトなどのアフリカのネコで、紀元前1500年頃から、  地中海や旧世界のほぼ全域へと生息範囲を拡大していった。  ヤマネコとイエネコのゲノムにはあまり大きな違いがないという。  孤独を好むヤマネコは、遺伝子上の大きな変化なしに、人間や他のネコたちと  共に暮らすイエネコになったようだ。また、古来より特定の習性や形質を持つ  ものが選抜されてきたイヌとは異なり、人間による品種改良も19世紀まで  ほとんど行われなかった。イエネコの特徴の一つである渦を巻いた縞模様  (ヤマネコは縦縞模様のみ)が現れたのも14世紀ごろと比較的最近だ。  論文著者の一人は「ネコは最初から完璧だった」と語っている。 The palaeogenetics of cat dispersal in the ancient world Nature Ecology & Evolution 1, Article?number:?0139 (2017) doi:10.1038/s41559-017-0139 http://www.nature.com/articles/s41559-017-0139 Genomics: The feline line Nature 546, 480 (22 June 2017) doi:10.1038/546480a http://www.nature.com/nature/journal/v546/n7659/full/546480a.html How cats came to dominate the world http://www.nature.com/articles/n-12452312 ナショナルジオグラフィックの解説が読みやすい http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/17/062100235/ 5.DNAのたたみ方は「いいかげん」  これは、以前にこのMLで話題になったものですが、6/3朝日新聞の土曜版に  紹介されていました。 http://www.asahi.com/articles/DA3S12966767.html  DNAはタンパク質ヒストンに巻かれてヌクレオソームを形成し、  ヌクレオソームはらせん状に規則正しく束ねられた太さ30nmクロマチン繊維  となり、それがさらに規則正しい繊維構造を作り、核の中に収納される  と考えられてきた。現在の教科書にはその図が載っている。  国立遺伝学研究所の前島一博教授らの研究チームは、通常の電顕とは違い、  生きた状態に近い細胞を観察できる「クライオ電顕」という装置やX線散乱  を使って調べたところ、「30nmの繊維構造」が見つからなかった。   規則正しく束ねるには大きなエネルギーが必要になり、詰まっていては、  RNAポリメラーゼもスムーズに動けない。いいかげんに折りたたむことで、  エネルギーを使わずに効率よくDNAの複製や転写が可能である。 http://maeshima-lab.sakura.ne.jp/kennkyuugaiyou.html  関連した最近の研究として早稲田大学の胡桃坂仁志教授らのグループの  研究成果がScienceに発表された。遺伝情報を読みはじめる位置を定めるには、  「2個のヌクレオソームが衝突して合体しているのでは」という見方が  あったが、この合体で生まれる特殊な立体構造が発見された。 Crystal structure of the overlapping dinucleosome composed of hexasome and octasome http://science.sciencemag.org/content/356/6334/205  胡桃坂氏の講演会が7/6に東大であるようだ。同じタイトルの講演が名大 で6/23にあった。名大でポスターを見た気がしたので探したがすでに終わっていた。 エピジェネティクスの構造生物学 胡桃坂仁志 教授(早稲田大学理工学術院) 2017年07月06日(Thu) 14:00-15:00東京大学理学部3号館 327号室 第1161回生物科学セミナー 6.サザエの記載者 福田 宏さんの特別講演会  食用としてなじみ深いサザエが実は「新種」だったことがニュースを  賑わせています。名古屋貝類談話会では、サザエの記載者である岡山大学の  福田 宏さんを講師に招き、特別講演会を開催します。この講演会は  会員のみならず一般の方への公開講演会となります。  2017年7月9日(日)13:00−16:30  (受付1Fロビーで12:50頃より)  場所:名古屋南生涯学習センター・視聴覚室  定員:50名  講師:岡山大学 福田 宏博士   演題詳細:「多くの人々は貝類をいかに認知しているか」   「1945年8月10日,昭和天皇・東条英機・サザエの学名」  以下の談話会アドレスへの住所,氏名の申し込みをお願いします。  連絡があった方には受付番号を返信させていただきます。  nagoya_kairui_danwakai◎yahoo.co.jp  名古屋貝類談話会  http://www.geocities.jp/nagoya_kairui_danwakai/ 7.名古屋大学博物館企画展・ムシの世界  2017年7月25日(火)〜10月21日(土)  10:00〜16:00 (入館は15:30まで)  休館日 日曜日、月曜日、夏期(8/12〜15)  特別講演会(申し込み不要・入場無料)もあります。  柳沼さんには、瑞陵高校時代に生徒向け講座に来てもらいました。  7月29日(土)「ホタルのおしりはなぜ光る・発光の謎」   大場 裕一(名古屋大学客員准教授・中部大学准教授)  8月10日(木)「蝶の世界ー奈良坂源一郎と田淵行男の業績」   橋 昭(名古屋大学名誉教授・元名古屋大学附属病院長)  8月23日(水)「昆虫の一生とホルモン」   溝口 明(愛知学院大学教授・元名古屋大学准教授)  9月9日(土)「カイコ歴史・カイコの未来」   柳沼 利信(名古屋大学名誉教授)  9月16日(土)「遺伝子から解き明かす昆虫の不思議」   大澤 省三(名古屋大学・広島大学名誉教授)  9月30日(土)「昆虫に学ぶ生きる智恵」   山下 興亜(名古屋大学名誉教授・前中部大学学長) http://www.num.nagoya-u.ac.jp/event/special/2017/170725.html 8.国立科学博物館特別展「深海2017」  東京上野の国立科学博物館では特別展「深海2017〜最深研究でせまる  ”生命”と”地球”〜」が始まります。  会期 2017年7月11日(火)〜10月1日(日)  休館日 7月18日(火)、9月4日(月)・11日(月)・19日(火)  夏休み中は月曜日もやっています。  夏休み中は平日でも混みますが、動物園、国立博物館、国立西洋美術館、  東京都美術館が休みの月曜日がオススメです。  私も、首都大のリカレント講座の前泊して行こうかなと思っています。 http://www.kahaku.go.jp/exhibitions/ueno/special/2017/deep-ocean/ 9.日本生物教育会・栃木大会8/3・4(再掲)  発表・参加申し込みの受付は終了しています。  私も「メダカのDNA教材」について発表する予定です。  「血液」の実験講座を申し込みました。  要項には、当日参加のことが書かれていませんが、  問い合わせ下さい。  日本生物教育会の全国大会・栃木県大会   開催期間 平成29年8月2日(水)〜5日(土)(一部は6日(日)まで)        2日(水)は理事会、3日と4日が大会、        現地研修は4日から5日・6日  実験講座もあります   会場  帝京大学宇都宮キャンパス 地域経済学科棟   http://www.tochigi-edu.ed.jp/bukai/rika/nc/index.php?page_id=60 10.ボルボックス野外で採れます  津島地区でボルボックスが発生していて、簡単に採取できます。  津島東高校の西側の水路で採れます。  6/14に採ったものは孫群体があるものでした。 11.現在配布・貸出可能な教材 saigot◎js2.so-net.ne.jp までご連絡下さい。  (普通郵便なら送料当方負担で郵送します)  (微生物は夏季は基本的に郵送を停止しています)  [種子・胞子]    古代米(紫黒苑)の種籾 お米です。100g単位なので購入しましたが、     田んぼでなく大きめのプランターで作るので、余っています。     だれかもらってください。収量はさほど多くありませんが、     授業で脱穀などをします。    アサガオ(むらさき・光感受性高い)    テオシンテ(トウモロコシの原種)    タイワンコマツナギ(藍染めの染料 石垣島で購入・発芽確認済み)    ヘゴの胞子(前葉体の観察など)  [生体]カイコ(卵)     カイコの卵は、冷蔵庫に保管してあり、出してから7日〜10日で孵化     してきます。     この間に郵送することになります。計算して(といっても正確に何日後     というわけにはいきませんが)リクエストしてください。    ミズクラゲのポリプ、    キートセラス(珪藻 プルテウスの餌)    ボルボックス、クラミドモナス、ミドリムシ(ユーグレナ)    クワ(幼木)、ゾウリムシ、ミドリゾウリムシ    ヌマムラサキツユクサ、セイロンベンケイソウ、シャジクモ  [貸出]インターバルレコーダー「レコロ」1台        キングジム http://www.kingjim.co.jp/sp/recolo_ir7/  [販売]カサノリTシャツ     http://www004.upp.so-net.ne.jp/saigot/BioEduRef/BioEduRef.htm ---------------------------------------------------- VolvoxML連絡事項 1.投稿について  Volvox ML ホームページに「投稿規定(投稿前のチェック)」  を作成しました。投稿前にチェックしてください。  http://www.i-mate.ne.jp/~volvox/Check.html  添付文書(写真も)は不可です。  Volvox ML ホームページに画像を掲載することも可能です。  (事前にvolvox-admin@i-mate.ne.jpまでご連絡下さい。)  ※なお、1回の投稿に字数制限があります。   投稿して受け付けられなかったら、削るか2つに分けて下さい。   一見短くても、多くの文字情報が埋め込まれていてエラーになる   こともあります。この場合、「テキスト」にすると良い場合もあります。 2.複数のメールアドレス登録について  学校用と自宅用など、複数のメールアドレスを登録し、  複数の場所に配信することも可能です。  volvox-admin@i-mate.ne.jp までご連絡下さい。 3.過去ログについて  http://www.i-mate.ne.jp/~volvox/archieves.html  で  最初は「パスワード登録」を行って下さい。  次回からは「過去ログをみる」でパスワードを入力してご覧下さい。   (つまり、関係ないなと思ったメールはどんどん削除すれば良いのです) 4.先月の新規入会等  メールアドレスの変更等がありましたら、   volvox-admin@i-mate.ne.jp までご連絡下さい。  先月の新規入会者はいませんでした。 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